ARTBOX
江戸時代から城下町として続く住宅街での新築計画。
約90坪の計画地には敷地内高低差が3.5mあり、そこから更に南側隣地まで3.5mの高低差がある北垂れ土地であり、中腹には土砂災害防止のためにRC造防壁が設置されているため、採光、眺望共に見込み辛い中で、施主より別荘のような非日常空間を実現したいと要望された。
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そこで開放的な室内空間を造りながら、感性を豊かにする暮らしを実現させるため、その要素として「アート」を建築に取り入れることにした。アートへの関心が高まりつつある時代において、日本の住宅規模から考えた場合、従来の飾るアートではなく、建築と融合するアートを考え、室内空間の邪魔をせず開放感を実現させるため、屋外でも成立するミューラルアート(壁画)を防壁に計画した。
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意匠として殺風景である防壁のネガティブな要素を、アートの力で再生させて高低差があり古い土留めが多い地域の新しい文化の一つとして提唱しながら、資産価値を高め、環境に配慮しながら持続可能性を生む役割を持たせた。
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カラフルな壁画に視線が向くように、室内は全体的にトーンを抑えて色の対比効果を発揮させた。
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トーンを落としたLDKに有機的かつ柔らかさを加えるために、ダイニングテーブルの脚部は薄い色の木をグラデーション状に組んだものを選定しながら椅子は座面、背もたれ共に薄い革製のものでシャープな印象を与えた。
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リビング上にも箱型のデザインを施し、室内にも「ARTBOX」というコンセプトを視覚的に印象付けつつ、6㎜の目地により壁を区切ることで塗り仕上げの工法を変えて、光が当たった時の表情に変化を持たせている。
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当初よりキッチンを意匠的に孤立させ、存在感を際立たせてアートのように見せたいと考えていたことから、アイランド側は砂岩調の明るいセラミック板で仕上げ、背面はオークハギ材をブラック塗装で仕上げた。アイランド部収納は目地を斜めにすることで収納があるという存在感を排除した。またキッチンの両サイドには印象的な凹凸を施した壁を計画し、石膏下地のエイジング塗装で仕上げることでシンプルな仕上げのアイランドキッチンとの対比を強調させた。
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パウダールームは濃いグレーの左官仕上げとしてシンクまで一体的につくり、シックな空間としながら印象的なブラケット照明(MELT-TomDixon)、テーブル照明(KUSHI MOBILE-KUNDALINI)、手のひらを模したスツール等で抜け感を演出している。またパウダールーム収納扉は鏡仕上げとすることで空間の広がりを持たせつつ、姿見としての機能を加えた。
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階段室には箱型のデザインを施し、外観、リビングと合わせて「ART BOX」というコンセプトを印象付ける意匠とした。ゴールド調の塗装仕上げにより表情豊かな空間としている。
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階段踏板には部分的にアラベスク調のレースによるスタンプを施して、無機質な色調に変化を加えている。
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絵画としてのアートだけではなく、ドライフラワーを用いたアートをエントランスに置くことで有機的な印象を与えつつ、幹の色に合わせてエントランス収納はメープル突板のシンプルな形状で構成した。
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「アートを詰め込んだ箱」というコンセプトを印象付けるため、外観は4つの箱型フォルムを計画し、間に開口部を設置して南面だけでは不十分な採光を北側から取り入れながら、RC部の杉板型枠、箱部の下見板張りスレート材により、城下町であったこの地域の歴史に素材や建築工法で紐付けた。
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エントランスは立体的凹凸を付けた木製ドアにより、類を見ない表情を実現させてコンセプトである「ARTBOX」内へのアートの期待を誘発させている。
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ARTIST
防壁壁画
@DORAGON76
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トイレ壁画
@Kensuke takahashi
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リビングキャンバスアート
@koryu
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住宅建築には類を見ないミューラルアートを「人工的景色」として計画することにより、意匠性だけでなく室内外のボーダーレス化による空間力の向上を図り、建築とアートの融合を実現させた。
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