2025/06/13
ジブリから着想を得る/魔女の宅急便
スタッフ:今日は魔女の宅急便についてお話したいなと思って。
個人的には、魔女の宅急便の建物のイメージってヨーロッパというイメージです。
ボス:そうだね。ヨーロッパ・・・スウェーデンらしいよ。
スウェーデンのストックホルムと、ゴットランド島のヴィスビューってところ。
ストックホルム
ヨーロッパって一目でわかるのは、作中にある建物を見ればわかるよね。ハーフティンバーって建物の外壁に木の柱とかが見えている感じ。木が半分見えるからハーフティンバーなんだけど・・
ハーフティンバーの建物
ボス:キキがお勤めする、パン屋のグーチョキパン屋さんの建物もハーフティンバーになってる。半分木を出したデザインが面白いよね。昔ヨーロッパで流行ったかたち。
スタッフ:そうなんですね。個人的にはヨーロッパの建物というと、アーチ状の窓の形はイメージがありますね・・こんな感じの↓
ボス:それはボールトだね。それから、ヨーロッパはバルコニーがあることが多いからか、基本外に洗濯物を干さない。乾燥機の普及率は、ほぼ100%に近いくらいなんだよね。
スタッフ:それって何か理由があるんですか?
ボス:バルコニーはお茶するところだからかな?文化が日本とは違うからね。魔女の宅急便もパン屋さん。でも日本は米文化だよね?文化が違えば建物のつくりも全然変わるよね。
スタッフ:それでいうと、魔女の宅急便に出て来るパン屋さんは、ガラスなしのところにパンが並んでいますよね。日本だとあんまり見かけないですよね?
ガラスなしのイメージ
ボス:んーそれは保健所的に実はNGだよね・・
だから グーチョキパン屋さんは営業許可がおりない。正確にいうと、おりない地域や自治体がある。現実的にはジブリパークにグーチョキパン屋さんはあるからね。
魔女の谷|ジブリパーク
https://ghibli-park.jp/about/majonotani.html
ボス:ジブリパークには物語のカウンターとかそのままあるから、できるところ(地域)もあるってことだよね。実は前に、魔女の宅急便のパン屋さんのカウンターデザインをオマージュしようと思っていた。あれって、框のデザインをしてるんだけど、あの框の形状を保健所に確認したら許可がおりませんって言われた。
スタッフ:そうなんですか?どこがNGなのでしょうか?
ボス:魔女の宅急便の映画本編では、こういう框のデザインをしている。これは許可がおりない。
映画本編の框デザインのイメージ
ボス:魔女の宅急便の最初のパンフレットはこういうデザインになっていて、こっちは保険所の許可がおりる。
パンフレットの框デザインのイメージ
スタッフ:え?デザインで許可が出るか出ないかが変わるんですか?
ボス:基本的に許可を何で取るかなんだけど・・・
①パン屋さん→菓子製造の許可
②パン販売+イートインや軽食を出す→菓子製造と飲食業許可
②の場合だと、厨房が2つ必要になるから、もし魔女の宅急便でそういう行為をしているのであれば、この場所は厨房に該当することになるんだよね。
厨房という場所は、基本的に埃が溜まるデザインはだめだから、こういう凹んでて、顎があるところはNG。
自治体判断なんだけど、確認した自治体はNGだった。
・・これは米粉パン店EWALUさんのことなんだけど。
ボス:このときのデザインは、商品がお客さんから見えやすいようにガラスを斜めにしていたんだけど、斜めにすることでそれが厨房内に入ってると言われた。
(右)詳細図
ボス:詳細図には、モールディングデザインの部材を一つ一つかいて、埃がのらない事を証明して保健所に持っていって、やっとOKが出た。一概に絶対に営業許可がおりないわけではないけれど、そういうエリアもあるんだよね。
法律とか条例とか取り決めというのは、建築基準法もそうだけど大枠があって、そこの中の細かいところは相談とか一般常識とか運用方法によって、具体的に決めていくもの。
パン屋さんは許可関係が多くて、イートインスペースつくると飲食業許可も必要だから、飲食業許可と菓子製造の許可を両方取るには厨房2つ必要。そうなると、それだけのスペースが欲しい。
菓子製造の方は完全に区切らなくてはいけなくて、引き戸とか開き戸とかで、部屋として区画しないといけない。コロナが流行したタイミングぐらいで、保健所の規定が変わったり、厳しくなった部分と緩くなった部分、両方できた・・自治体によって違うんだけどね。
今、バタ戸をつけなくてもよくて、チェーンとかでいいところもある。
バタ戸
あとは水栓の仕様も変わった。昔はコマ式・・指で回すタイプでOKだったけど、大きめのレバー式、手で触らなくても水が出るタイプに変わったね。
ボス:グーチョキパン屋さんの間取りは公式には出ていないんだけど、外観と映像からみて数多くの人が間取りをつくっている。
(左)1F (右)2F
ボス:これ、違和感を感じない?
スタッフ:????
ボス:水まわりがないよね。ここが店舗併用住宅という、申請であれば通らない。店舗の厨房をキッチンとして使ってはいけないから。店舗併用住宅の時は、住宅側に小さくてもいいからミニキッチン、水が流れるシンクと、加熱調理器が必要。
スタッフ:なるほど。
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ボス:映画を見て建築物をしっかり見た後にジブリパークで答え合わせをすると、めっちゃ楽しいと思う。実物と映像の世界の整合性とか。
スタッフ:建物で気になるところに目がいかないです・・。多分何も考えずにジブリの雰囲気や世界観を楽しんでしまいます・・
ボス:まあ、一般の人はそうなるよね。
ちなみに、ジブリの中でずっと気になっていることがあって、キッチン釜みたいなものが毎回あるんだよね。石窯というより調理する場所にあるからレンジフードに近いのかもしれない・・排気するための。アリエッティにもある。
植木鉢で出来た釜
ボス:それから、窯の開口が極端に大きい。これは多分石窯というよりかは、調理する場所だから広くしていると思う。石窯はドーム式が一番熱効率がいい。比率のおすすめがあって、ドームてっぺんまでの大体3分の2ぐらい 63%ぐらいの高さの開口をつけるのがいい。
これは空気を取り入れながら熱で上昇気流になって、輻射熱であたためていくから。でも、ジブリの作品は開口があきすぎているから熱が逃げてしまうんだよね。多分、パンを焼く窯とかではなく、レンジフードの代わりだと思うから、こういうデザインなんじゃないかな?
ハウルの動く城の釜
ボス:レンジフードは高さも決まているんだよね。ガスコンロの1m(100cm)以内と建築基準法で決まっている。消防法は800mm(80cm)以上。コンロから800mm(80cm)から1m(100cm)の間に、フードがあるっていうのが基本。
だから、これを見て、「窯にしては広いな。石窯じゃないんだな。レンジフードなんだよな。だけどこれフードにしては高さ高すぎるよな。」って、建築に着目するとそういう思考になる。
スタッフ:なるほど。。知識があるとそういう視点になるんですね。
ボス:そういうば以前、chatGPTでうちで飼っている黒猫をジブリ風にしてみたんだよね。
(左)ボスの愛猫コク (右)chatGPT
スタッフ:一時期話題になっていましたよね。黒猫なので、ジジっぽいですね。
ボス:クリエイターの人たちって特にジブリは手描き・・ めっちゃ大変だと思うんだよね。それを思うとさ、ものを作る立場としては何とも言えないよね。chatGPTとか、本当にすごい時代に突入してるよね。考える力をなくしてしまうかもね。これからの時代は調べる力って感じだよね。
スタッフ:そうですね。そうなってくると、人間がいなくなるんじゃないですか・・いつかは 。
ボス:魔女の宅急便から、最後結論は “人間はいなくなるんじゃないですか?”・・・いいと思います。
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https://www.youtube.com/watch?v=S6VdUwd9tcQ